PETROSOLAUM(ペテロオラウム)とは?

PETROSOLAUM(ペテロオラウム)とは?

By 齊藤 大輔 投稿日: / 最終更新日:

今シーズンより新たにお取り扱いさせていただくブランド「PETROSOLAUM」。

instagramでは一足先にちらりと登場致しましたが、こちらで改めましてしっかりとご紹介させていただきます。

本筋に入る前にまずは触れておかなければならないのがこちらのブランド名。

「ペテロオラウム」と初見で読めた方が0人であることは明らか過ぎる程に印象的なブランド名です。

ご多分に漏れず私も、読み方も分からなければどの様な意味が込められているのかも全く想像することすら出来ない状態でしたので、デザイナーに直接伺いました。

不思議な響きのこちらのブランド名は、石油を意味するPetroleumという単語と、デザイナーの名である宗太郎(Sotaro)を組み合わせた造語とのことです。

「なぜ石油?」と疑問が浮かぶと思いますが、デザイナーのお父様が石油関係のお仕事をされており、家族を大切にするという想いからこちらに決めたとのことでした。

インソールにはブランドロゴと共に指紋のマークが入っております。

こちらは仕事で手が汚れて帰って来たお父様を表現しており、手仕事を大切にしているブランドの指針の表れでもあります。

また、石油を採掘するには地面を深く掘ることが必要となりますが、物事を深く掘り下げるというブランドの姿勢と重ねた意味も持たせているとのことです。

PETROSOLAUMがデザイナーである宗太郎さんと実の弟である亮さんの二人で運営されているのは、「家族を大切にする」というブランドの想いを体現しているなと感じます。

ドアを開けた瞬間すぐに革の良い香りが鼻に抜けるアトリエでは、革の選定、裁断、サンプル製作を行い、クロコダイルなどのエキゾチックレザーの作品に至っては自身で製作してしまうものもある程の職人気質なブランドです。

PETROSOLAUMには、01、02、03と三種類の木型がありますが、「03 last」はビスポークに用いられる非常に高度な技術で作られるハイエンドモデル専用の木型であり、こちらの圧倒的な完成度、作り込みをご体感いただきたいと感じ、当店ではこちらの「03 last」を中心にオーダー致しました。

中でも私が一番惹きつけられた、当店のマスターピースとして永く展開させていただきたいと感じたモデルを例にとって、その作り込みをご紹介致します。

PETROSOLAUM

【ラスト1点】Hidden Derby Low(cordovan butt)

¥209,000 税込

" ハイエンドな仕様で細部まで手作業により抜かり無く仕上げられた、高い完成度を誇る作品。独自の革使い、縫製仕様によるデザインが魅力。 "

Hidden Derby Lowというモデルです。

PETROSOLAUMでは各モデルに対して底付けの製法、革質、色などを指定してオーダーするのですが、当店ではハンドソーンウェルト、コードヴァンバット、DARK BROWN/BLACKという指定でオーダー致しました。

※ここからは専門的な用語も多くなりますが、詳細な説明は商品ページよりご確認くださいませ。


まずは足を入れて驚くハンドソーンによる非常に軽く柔らかな履き心地は是非ともご体感いただきたいと強く思います。

そして流麗な美しいフォルム。

ソールの息を呑む美しさ。

フィドルバックによる色気のある曲面、そしてそれを引き立たせる深く抉られたヒールの形状。

丁寧に打ち込まれたウッドペイスも散見され、パッとソールを見ただけではもうビスポークとしか言いようが無いレベルの作り込み。

あらためてもう一度言いましょう。

既製靴です。おそろしいことに。

吊り込みももちろん職人の手によるものであり、その証のタックホールも見られます。

アッパーを木型に仮止めする際に打ち込んだ釘の跡がこうして残る訳ですね。

細部の美しさで見逃さないでいただきたいのはソールのコバ部分。

美しく磨き上げられていることは当然として、平コバから丸コバへ滑らかに移り変わってゆきます。

これがグッと絞られたウエストのラインをより美しく見せております。

ヒールラインの曲線美も同様に見るべきポイントです。

次にこちらの作品で使用している「コードバンバット」という素材に関してですが、こちらはPETROSOLAUMが日本が誇る姫路の名タンナーの「新喜皮革」と共同開発したオリジナル。

コードバンと聞けば皆様お馴染み、誰もが目にしたことのあるツヤツヤのレザーで、馬革の大トロみたいに希少な部位ですね。

コードバンバットとは、美しいツヤを持つコードバン層とその周りの繊維が粗く無骨な質感のホースバット部分を敢えて一緒に用いることで、一枚の革の中で表情の変化が見て取れる唯一無二な素材です。

コードバンならではの妖艶な光沢を持つキメ細やかな部分から、ヒール辺りを境に徐々にワイルドな表情に、グラデーション状に革の質感が変化しているのが分かると思います。

この様に革の表情をコントロールしてデザインに活かすことがPETROSOLAUMの得意とする部分の一つであり、他ブランドとは異なるアイデンティティとなっております。

そして「Hidden Derby」というこちらのモデル名の核心に迫るのが次の仕様。

履き口、外羽根のアウトラインが全てステッチレスで非常にミニマルな見た目のこちらは、アッパーの一部を薄くスライスしてライニングと縫い合わせ、また革を伏せるというPETROSOLAUM独自の手法によって仕上げられております。

アッパーをこういう状態にしてライニングに縫い付けるということですね。

もう、狂気の沙汰です。

袋縫いでもステッチレスに仕上げることは出来ますが、切りっぱなしの様にエッジの立ったシャープなアウトラインはこちらの手法ならではです。

そして「切りっぱなしの様に」仕上がるこちらのテクニックによる大きな特徴は、「革の断面が見える」ということ。

「革の断面が見える」ということを最大限に感じられ、かつ革の魅力もまた最大限に引き立たせる為に革の色にDARK BROWN/BLACKを指定することは必然であり、即決でした。

革のベースの茶芯が僅かに覗くことで力強さ、無骨さという「雑味」の様なものが少しだけ加わり、美しく作られたビスポーク然としたこちらの作品がただのクラシックなドレスシューズとはならない良いバランスだなと感じております。

もう一つ細かな点として、デフォルトでは出し縫いが白ステッチなのですが、当店では黒ステッチに変更し、こちらはドレスな印象を損なわない様に仕上げていただきました。

細かな運針を感じるには白ステッチの方が良いのですが、ドレス顔を強調する為にこちらの黒ステッチは譲れない仕様でした。

しかし前述の様に茶芯レザーを指定したことで、ドレスシューズとして綺麗に履くか、ワークブーツの様に敢えてガシガシと履いて茶芯ならではの経年変化を愉しむかという選択肢が生まれており、どちらの道を選ぶかはオーナー次第です。

私はどちらを選ぶか?

こちらに関しましては既に腹が決まっており、美しいドレスシューズとして綺麗に履き、綺麗に履き切れず傷が目立って来た段階でガシガシと履いて「ノーメンテで気を遣わず履いてるんですよ〜」とあたかも初めからそのスタンスで履いているノンシャランな伊達男路線にナチュラルにスイッチするつもりです。

「やっと味が出て来てくれましたわ〜」などと言い出したら「やってんな」と生暖かく見守っていただけましたら幸甚です。

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