経年変化を重視した、コスト度外視の作り込み

こちらの作品では、経糸にデニム特有の経年変化を楽しめる様に糸を中白にする為に、枷染めでは無くロープ染色を施した糸を使用しております。
肌に触れる緯糸には、贅沢にスビンコットン(※)を使用しております。
さらに、こちらの糸を旧式のシャトル織機(※2)で織り上げて、凸凹のある独特な風合いに仕上げております。
高価な原料を、高価でありつつ大量のロットが発生する染色方法で、コストの掛かる旧式織機で織るという狂気とも言える作り込みでありますが、求めるものを形にする為に決して妥協しないデザイナーの強い意志が現れている部分です。
整理加工をしていない状態で縫製し、その後ワンウォッシュを施しております。
通常のデニムには見られない「捩れ」が出ているのが魅力です。
脇線が正面に来る程に強烈な捩れが生まれております。
縫製部分には強い縮みが出ており、非常に存在感のある生地に仕上がっております。

※スビン綿とは…世界最高峰と言われる"海島綿"と、インド原産の超長綿"スジャータ綿"を交配させて品種改良した、インド最高級の綿です。スビン綿は、他の超長綿と比較しても最も細い2.8マイクロメートルであり、非常に柔らかく、美しい光沢、滑らかな肌触りが特長となります。油脂分の含有量も多く、独特の"ヌメリ感"はまるでカシミアを思い起こさせます。

※2シャトル織機…現存台数も少ない旧式の織り機。現在主流の最新の織機と比較すると非常に生産スピードが遅いのですが、低速で織ることで生地が空気を含んだ様にふっくらとした凹凸のある仕上がりとなるのが特徴です。着用を重ねた際の経年変化の出方もこちらの織機ならではのものがあります。

無骨さのあるワークジャケットデザイン

英国のワークジャケットをベースにしたデザインです。
直線的でやや無骨な雰囲気の一重ジャケットに、ヴィンテージ感のあるチェンジボタンの仕様。
直球なワーク感のあるデザインと、前述の美しい光沢のある滑らかな生地とのギャップが大きく、とても印象的な作品です。
テーラードジャケット程気負わず着用出来るデザインですが、確かに品の良さもある、絶妙なバランスに仕上がっております。
少しだけ丸みを持たせたパッチポケットも、マイルドなイメージに見せております。